カラスノエンドウ
昼休み構内をぷらぷらしていると
「おーい、あまのじゃく!」 と社長の呼ぶ声がする。
(おっ、特別手当でもくれるのか) と思い、急ぎ行くと。
「どうだ、薪割は捗っているかね」と他人事のようにつぶやく。
(なんだ御小言か) 少々落胆するが、
見習の分際であるので当たり前か。
「今日は木が細い為、時間が掛かります。」と苦言を申すと。
聞いているのかいないのか、おもむろに足元の
カラスノエンドウをむしり取り口にくわえた。
どうだ吹けるかと言わんばかりに、「ビービー」と吹き鳴らす。
(今日は、つぶやきの代わりに鳴りもので来たか…。)
悔しいが、吹けなかった。
カラスノエンドウのそうじの仕方と吹き方を教わったが、
スースーと空気が漏れるばかりだ。
そんな私を残して、社長はビービーとドレミファの音階を
奏でながら事務所に戻って行った。
(いったい何の用だったのだろ?) と思いながら
幾つものカラスノエンドウをむしる私であった。
この日の午後、社長はチェーンソーでの細木のまとめ切り
を伝授してくれた。
おかげで玉切りがぐんと速くなったのは言うまでもない。 ^^
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